中級者~上級者向け。
バッハがオルガンのための6つのトリオ・ソナタ(BWV 525-530)を作曲したのは、およそ1727~1730の間、彼がライプツィヒのSt. Thomas Churchで先唱者をしていた頃です。 バロックのジャンルにおけるトリオ・ソナタでは、通常4人のプレイヤーが作品を演奏します。 ふたつのソロ・パート(ヴァイオリンとフルート、またはオーボエ)、ベース・パート(チェロ、ヴァイオリン、もしくは、バスーン)、コンティヌオ・パート(オルガン、ハープシコード、またはリュート)。
Kothenに滞在していた時期(1717-1723)、バッハはあらゆる楽器のために幾十ものトリオ・ソナタを作曲したと言われていますが、残ったのはわずかな作品だけです。 実際に、通常音楽のオファリング(ずっと後に作曲されたもの)とともに演奏される「2本のフルートと通奏低音のためのトリオ・ソナタ」(BWV1039)は、バッハのトリオ・ソナタとして確実に本物であると言うことのできる唯一の作品です。 バッハはもともと、ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロ用にこの作品をアレンジしました。(BWV1027、ヴィオラ・ダ・ガンバとチェンバロのためのソナタ) ヴィオラが第二声部を1オクターブ下げて弾きながら、上のソロ・パートはチェンバロの右手で、演奏されてきたものです。 その後、バッハが最終楽章をオルガンのためにアレンジしました(Trio in G) このアレンジでは、ややシンプルにしたベースをペダルが演奏し、左手が第二声部を演奏します。
オルガンのための6つのトリオ・ソナタ(BWV 525-530)の楽章のいくつかは、バッハが同様にアレンジした幻の作品たちに遡るかもしれません。 多くの楽章には前期のバージョンというのが存在しており、その中でも、オリジナルでは少なくとも1つの楽章が、複数の楽器のために書かれたものであるとされています。(BWV528,I) カンタータ76番(もろもろの天は神の栄光を語り)の第二部シンフォニアは、オーボエ・ダモーレ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、バッソ・コンティヌオのために作曲されました。
ソナタ特有のリニアで室内楽的要素を含んだ傾向は上のような予測をさらに裏づけ、ふたつの楽器とバッソ・コンティヌオのためのソナタを録音した最近の音源は、予想されるオリジナル・アレンジを再構築した姿をさらに正当化しています。
リトルネロ・フォームのVivaceは、トゥッティ、ソロの両方においてコンチェルトの楽章を思わせる展開となっています。 3度で重なる快活なホモフォニックのテーマ(トゥッティ)は、アップビートの16分音符音形を真似た高声部ソロ・インタールードと対照をなし、陽気な掛け合いをするかのように響きます。
美しいトリオ・ソナタの中でもひときわ輝くラルゴは、Ebメジャーというキーとはうらはらに、悲しげで、物思いにふけった印象を強く受けます。 Cantus firmus(ロング・トーンがふんだんに含まれるメロディ)にため息のようなモチーフを散りばめたオープニングは純粋で、深い瞑想に入っていくような雰囲気をつくります。緻密に織り上げられた16分音符のソロ・パートがウォーキング・ベースと相まって曲の密度を増してゆき、徐々に動きの出てくるベースと主題やモチーフとの関係を彩ります。 第24小節から始まる8分音符のベースは冒頭の16分音符フレーズをシンプルにアレンジしたものですが、あくまでもリズムを聴き手の耳に馴染ませる程度に抑えられています。
アレグロでバッハは、ともすると矛盾しかねない2つの音楽スタイルを融合し、フーガの発展形としてフィナーレを迎えます。 伝統的なAlla Breveにのっとったリニアで広範囲な主題は荘厳かつ控えめで古様式を思わせますが、このスタイルはバッハ後期には既に時代遅れの感が否めなかったことでしょう。 よりコンテンポラリーな作品では、バッハが古様式を用いることが批判の対象となることもありました。 バッハは、この古様式に現代的な第2楽章をぶつけ、リズムの躍動感と遊び心にあふれる対主題を創りだしました。
テンポや実線のスラーは、自筆譜に書かれていたものを引用しています。 スラーがあいまいになっている部分が数箇所(特に第1楽章、第44~45、52小節)あります。 他の声部とパラレルに進行するパッセージでは、アーティキュレーションやフレージングの細かい指定(破線のスラー、スタッカートやカンマなど)は避けています。
2008年1月/Olaf Muhlenhardt