サックス四重奏。中級車、上級者向け。
この作品はおそらく1725年ごろにバッハ自身の手によって作曲したものと推定されています。彼の鍵盤楽器のための作品群は、彼のオルガン作品と非常に密接な関係にあります。原譜にはmanualiter(オルガンの音色を変化させる「ストップ」装置を手で操作する、という意味)という表示がありますが、これこそこの作品がオルガンのために書かれたものである証拠といえます。
《ファンタジア》の部分は、非常にシリアスで雄大な構成をもっています。前奏部分は比較的軽いタッチで書かれているものの、非常に現代的な雰囲気さえ感じさせるものです。協奏曲としての構成は古典協奏曲の原則にのっとり、厳格にシンメトリカルなものになっています。第一主題は合計4回出現しますが、イ短調、ホ短調、ニ短調、そしてイ短調に戻る、という展開をみせます。それぞれのあいだにある3箇所の間奏部分ではそれぞれ3つの部分だけで構成され、和声感豊かな主題部分をひきたたせます。
続く4声のダブルフーガは、バッハならではの職人芸的な対位法の妙技を堪能させてくれるものです。ふたつの対照的な、それでいて高貴な主題をうまく対比させているのです。第一のそれは全音階的かつリズミカルな、快活なものであるのに対し、第二のそれは半音階の下降音形を主としたものになっています。《ファンタジア》のあとに短いカデンツァがあり、そのあとがこのダブルフーガになりますが、はじまりは聞く人を驚かせるように、非常に快速なテンポで始まります。そして最後にふたつの主題はみごとにとけあいつつ、三回繰り替えされて終わります。サックスが開発される数百年前の時代に思いをはせつつ、サックスという比較的新しい楽器の可能性を学ぶには、非常によい素材といえましょう。