難解な理論にとらわれずに ヴァイオリンの音をジャズに変身させる!
ジャズ・ヴァイオリン界、唯一無二の存在、ステファン・グラッペリがジプシー・ジャズの開祖 ジャンゴ・ラインハルトと活動を共にしていた30年代から、その後60年代までの演奏スタイルの解析を中心にしたメソッド・ブックです。クラシック経験がある方にとって心強い、譜面によるアーティキュレーションの説明やインプロヴィゼイション(アドリブ)中のボウイングなどについてもカバーしてあります。
そして、本書の素晴らしい点として、必要以上の理論について言及していない筆者の姿勢が上げられます。どうしても教則本は裏づけを説明しがちですが、この点Tim Kliphuis氏は難しい所は敢えて説明せず、それでもグラッペリ・サウンドに近づける様に配慮がされています。
もちろん、簡単なコードに関する知識も、スケールについても説明されていますので、ジャズの基本的な内容は十分学ぶことができるでしょう。
いかにグラッペリ・スタイルに近づくかという視点から考えれば、ゴースト・ノートやハーモニクス、スライドなどの技法は特に重要な項目といえます。そして、開放弦を多用したり、ジャズを弾く上でスウィングさせやすいボウイングなども同じく大切で、そのようなテーマの中で、コード・アルペジオを弾く練習などもあります。
後半ではチューンの、あるコード進行に対して、グラッペリがどのようなアプローチで弾いているのかの説明があります。30年代から60年代という幅広い時代を取り扱っているため、マイナー・コードに対するアプローチも変化するなど、グラッペリの演奏スタイルの変遷にも触れられています。スラーに関しても同じく、60年代では以前の演奏よりも少なくなっているのです。
本書はステファン・グラッペリのように弾きたいという方はもちろんのこと、ヴァイオリンでインプロをしてみたいという方へのジャズ・ヴァイオリン参考書としても十分役立つ内容であると言えます。最終的に自分自身の演奏スタイルを形成する前に、上記に示したようなグラッペリのアプローチを理解しておくことは、非常に有意義であり、それがそれぞれの演奏の裏づけとなり自信をもってインプロに向かうことができます。
グラッペリのソロについては、
Viper’s Dream
Minor Swing
Daphne
I Can’t Give You Anything But Love
Sweet Georgia Brown
Nuages
が譜面になっています。
さらに付属CDには細かいフレーズ単位での模範演奏が収録されていて、このスタイル習得にとても有効であり、上記チューンの伴奏も入っているため、それを鳴らしながら演奏をするとさらに効果的です。
この書籍が英文ではなく、日本語で学ぶ事ができるという点も大きなアドバンテージになるでしょう。多くの方々にぜひ読んでいただきたいと思います。そして、ジャズ・ヴァイオリンを楽しむプレイヤーがもっと多くなるように願っています。
