『Chapter 1 サルサに関する基礎知識』より
サルサとは、さまざまなリズム・スタイルとフォーム(曲の形式)を指す用語です。サルサの起源を勉強する時、このタイプの音楽に最も重要な(他の地域では見られない)役割を果たしてきたキューバに目を向けなければなりません。アメリカやカリブ海沿岸の国々であるプエルトリコ、ベネズエラ、メキシコ、コロンビア、ドミニカ共和国などもサルサの発展に関与していますが、サルサの土台を創ったのはキューバです。
サルサという用語そのものは、このホットなアフロ・キューバン・ミュージックを広く宣伝するために、1960年代にニューヨークで創られました。スペイン語でサルサという言葉はソースという意味ですが、それは主にホットなソース(辛いソース)のことであり、多くのカリブ料理や他のラテン・アメリカ料理では一般的な食材として使われています。私たちは、サルサを理解するためにキューバの音楽史、音楽的発展の歴史、カリブ海諸国とアメリカの至る所で行われた異文化交流およびその影響などを理解する必要があります。
アフロ・キューバン・ミュージックは、アフリカとヨーロッパのハーモニー、メロディ、リズム、楽器が溶け合って1つのポット(鍋)に入っているようなものです。16世紀以降これらの要素が融合して、複雑かつ魅惑的な無数の音楽形式となり、楽器編成、ダンス・ステップ、詩の形式、曲を構成するデヴァイス、リズミック・フレーズやメロディック・フレーズなどのさまざまなバリエーションをサルサに与えています。
サルサが発展した最大の要因は、さまざまなドラミング・スタイルに深く関係しています。アフリカ人たちを奴隷にしてきたキューバで最も顕著だったことは、彼らの宗教的あるいは非宗教的なドラミング・トラディションを維持することができたということです。この伝統におけるユニークな要素は、楽器演奏と言葉を組み合わせているところで、楽器で演奏される音楽そのものをさらに言葉で発展させました。
キューバの大衆文化とアフリカの伝統的なドラムとの融合は、アフロ・キューバン・ミュージックとすべてのアフロ・セントリック・ミュージック(アフリカの影響を強く受けた音楽)にとって最も重要な要素であるといえます。キューバでは、ドラムをとおして多くの伝統的な習慣が保たれてきましたし、新しい習慣も創られてきました。本格的なアフロ・カリビアン・ミュージックのプレイヤーや作曲家になるためには、自分の楽器にかかわらず、究極的には全員がドラマーになる必要があります。
サルサのリズムは、キューバのポピュラー・ミュージックへと直接受け継がれます。この考察において特に重要なのは、宗教的あるいは非宗教的なアフリカおよびヨーロッパの要素が組み合わされたルンバ(rumba)、ソン(son)、ダンソン(danzón)などのフォームです。本書に収録されているマテリアルは、そのすべてがこれらのフォームから成り立っています。本書に収録されている譜例は、複雑かつ表現豊かなアート・フォームを理解し、あなたのベーシック・スキルを向上させる手本として役立つでしょう。しかしながら、上達するためには経験を積むことが最も効果的であることはいうまでもありません。

