『はじめに』より
ピアノのおけいこで、初歩的な学習が終わりますと、この曲集に収められているようなやさしい曲も弾くことになります。音楽の書きかたがポリフォニックな扱いになっていますので、バイエルのようなものと比べますと、少し難しい感じがするかもしれません。
しかし、いずれ勉強することになる、バッハの「インヴェンションとシンフォニア」へいきなり入るよりは、ここで、このような曲を少し弾いておくほうが、あとが楽に勉強できると思います。さらに、和声的な教材ばかりでなく、このような対位法的な作品も早くから勉強しておいたほうが、音楽的に豊かになります。
この曲集は、ほとんどがアンナ・マグダレーナ(1725)から取り上げたやさしいものが中心ですが、それより少し進んだ段階でのプレリュードのような曲も収録してあります。とくに順番に配慮をしたわけではありませんが、ほとんどは、やさしい曲から順に並べてあります。適宜選んで勉強してみるとよいでしょう。
バッハの作品には、やはり原典版という形にするのが理想的なのです。しかし、それでは初心者の人にはさらいにくく、かえって、勉強をつまらなくしてしまうのです。この曲集では、すべて実用版的な扱いにしてあります。装飾音の奏法を指示したのも、同じ趣旨によるものです。したがって、もし、原典版が必要なことがありましたら、それも併用しながら、参照していただきたいと思います。
もちろん、フレージングにしても、装飾音の双方にしても、すべて、ひとつの例として受け止めていただき、もし、他のほうがよいと思うような場合には、 変更することは少しもさしつかえありません。メトロノームによるテンポの指示についても同様で、テンポの場合には、その音楽にふさわしい本来のテンポというものがあるわけです。初心者の場合、とくに子どもの場合には、それぞれの人の能力に応じた適切な指示が必要でしょう。
この曲集を、バッハの「インヴェンション」や「平均律」に入る前の、いわば「バッハ入門」といったつもりで活用されるとよいでしょう。みなさんのお役に立てば幸いです。